難民の選挙 あらすじ

成央市、雨の高架下で、ホームレスの須和吟平と市議会議員の物部利明が出会った。それは、格差を越えた心の結びつきを生んだ。

しかし、市はまちの美化のため、ホームレス強制排除の方向へと動き出す。単独で異議を唱える物部であったが、現市長藤浪の権力の前にはまるで刃が立たず。居場所もつながりも失った須和は、譲り受けた名刺を頼りに、物部に助けを求めた。

そして、須和の哀れな出自を耳にした物部とその妻、佐代里。物部は須和を懇談会に招き、公務員たちの前で話をさせた。笑われ、馬鹿にされはしたが、ただ一人、若手職員の心には響いたようであった。物部は考える。「市民に対して正しく、優しい行いをする」ために――

「須和くん、次期市長選に出てみないか?」突然の誘いに、たじろぐ須和。しかし、物部の「バカみてぇ」な熱意に押され、須和は自らの意志で出馬を決意するのであった。

そして、須和、物部と佐代里の三人は選挙の事前準備(政治活動)に取りかかる。さらに心強い味方となる幹部、労働者の吉平をリクルートして、後援会の発会、辻立ち演説やミニ集会など、次々と一生懸命にこなしてゆく須和。一から自治法や政治についての勉強も頑張った。しかし――

対立筆頭候補の前市長、藤波の魔の手が須和に忍び寄る。それは記者、悠美を使ってのハニートラップだった。

無実の罪を負わされる須和。そして、約束を誓い合った物部との決裂。

ゼロから立ち上がり、ようやく手に掴めそうな幸せ――それを根底から覆され、須和は行き場もなく電話ボックスへ。いのちの電話とのやり取りの中で、彼はまだ命あること、「まちを愛している」ことに気づかされる。

須和は再起し、ホームレスたちと共に無謀な選挙に挑む。最後に、市民へ、何より物部への感謝を表明するために――。